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Japanische Klassiker mit Furigana

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あやしのもの

怪しの者

国枝 史郎

Lesen Sie 怪しの者 (あやしのもの) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.259 Zeichen · 25 Bildschirme

Aozora Bunko

でも露路には枝道が多く、こみいっておりましたので、わたしがどこへかくれたか、西条様にはわからなかったようです。

その西条様がぼんやりした様子で、一軒の家の前に佇んだのは、それから間もなくのことでした。

平家だての格子づくりの、粋な真新しい家の前でした。

と、格子戸の奥の障子が、土間をへだてて明るみ、やがて障子が開き行燈をさげた仇っぽい女が、しどけない姿をあらわしました。睫毛の濃い大型の眼、中だるみのない高い鼻、口はといえばこれも大型でしたが、受け口めいておりましたので、色気にかけては充分でした。空いている左手を鬢へ持って行き、女のくせで、こぼれている毛筋を、掻きあげるようにいたしましたが、八口や袖口から、紅色がチラチラこぼれて、男の心持を、迷わせるようなところがありました。及び腰をして格子戸の方を隙かし、

「どなた、宅にご用?」

と、含みのある水っぽい声で言ったものです。

「いや」

と西条さんは狼狽したような声で、

「狼藉者が入り込んだのでな」

「狼藉者? 気味の悪い……どのような様子の狼藉者で?」

「乞食じゃよ、穢ない乞食じゃ」

「お菰さん、おやおや……お菰さんでございましたら、もうこの辺へは、毎日のように、いくらでも立ち廻るのでございますよ」