Japanische Klassiker mit Furigana
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あやしのやかた
怪しの館 短編
国枝 史郎
Lesen Sie 怪しの館 短編 (あやしのやかた) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 81.915 Zeichen · 165 Bildschirme
そのうち次第に眠くなった。これは毎晩のことである。劇しい睡眠に襲われて家内一同眠っている間にいろいろの事がおこるのであった。
「眠ってはいけない、眠ってはいけない」
こう弥右衛門は呟きながら傍の火鉢から火箸を抜き取りそれを股へ突き立てた。これで眠気は防ぐことが出来る。
この間も夜は更けて行った。と鳴り出した鐘の音。回向院で撞く鐘でもあろうか。陰々として物寂しい。
とたんに「ヒェーッ」と帛を裂くような凄じい掛け声が掛かったかと思うとピューッと空を抜く矢走りの音に続いて聞こえる弦返りの響き! しかしそれより驚いたのは、その次に起こった笑い声であった。
「ワッハッハッ」と暢気そうに馬鹿にしたようにまず響いたが、「そんな事じゃ駄目だ、駄目だ。それじゃ獣は殺されねえ。ワッハッハッ」とまた笑う。それは多右衛門の声である。
その笑い声が途絶えた刹那またも裂帛の掛け声がした。矢走りの音、弦返りの響き。
「ワッハッハッハッまだ駄目駄目!」と、多右衛門の声がまた聞こえた。三度凄まじい掛け声が起こり続いて矢走りと弦返りの音が深夜の沈黙を突裂いたがやはり多右衛門の笑い声が同じような調子に聞こえて来た。