Japanische Klassiker mit Furigana
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あしのうら
怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像
蘭 郁二郎
Lesen Sie 怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像 (あしのうら) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 109.233 Zeichen · 223 Bildschirme
同時に、これほどまでに胸を搏つ美しさにも逢ったことがなかった。
川島は気がついたようにまだ艫を抑えていた手を離して、立ち直すと、重いリュックサックを肩から外し、輝いている沼を背にした逆光線の彼女に微笑しながら話しかけた。しかしその言葉は、何時もに似ず甚だぎこちないものだった。
「おどろきましたねえ、まさかこんなところに人がいるとは思いませんでしたよ」
彼女はその椿の葩のような唇を二三度動かしたけれど、それは喋るつもりではなくただ微笑んだものらしかった。
「この近くに家があるんですか、実はぼく迷っちゃったんですよ、熊野川の方に出ようと思ってたんですが、そっちに行くにはどんな見当でしょう……」
「…………」
しかし彼女は、矢張り微笑んだきりだった。
「ご存じないんですか――」
彼女は、すんなりとした透き通るような手を挙げた。そして、どちちかの方角を指そうとしたに違いないのだが、突然、さっき川島とぶつかった時のような強張った表情になったかと思うと、挙げかけていた手を何時の間にかするりとおろしてしまっていた。
と同時に川島は、背後の方から森の中を踏分けて来る跫音を聞いて、思わず振り向いた。