Japanische Klassiker mit Furigana
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かいいくろひめおろし
怪異黒姫おろし
江見 水蔭
Lesen Sie 怪異黒姫おろし (かいいくろひめおろし) von 江見 水蔭 (えみすいいん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.963 Zeichen · 26 Bildschirme
いつぞや寝所間近く忍び寄った曲者が有った。危く御簾の内にまで入って、燈火消そうと試みたのを、宿直の侍女が見出して、取押えて面を見れば、十七八の若衆にして、色白の美男子であった。
それは併し磔刑にして、現世に有るべき理が無いのに、その時の若衆そっくりのが、他の土民等と道端に土下座しながら、面を上げてこちらを見詰めていた。弟にてもあるかと思ったが、その場限りの筈の者が関川でも再び現われた。大田切では旅商人の姿であった。関川では巡礼姿。今又この黒姫の裾野にては、旅の武士の姿なのであった。
同じ人か。別の人か。同じ人とすれば、何んで着物が変るのか。別の人とすれば、三人まで、似たとは愚かそのままの顔。もしや、過ぎし曲者の由縁の者にて、仇を報ぜんとするのでは有るまいか。油断のならぬと気着いた時に、ぞっとした。
忽ち、チクリと右の手の甲が痛み出した。見ると毒虫にいつの間にやら螫されていた。駕龍の中には妙なる名香さえ焚いてあるのだ。虫の入りようも無いものをと思えども、そこには既に赤く腫れ上っていた。
「これ、誰そ、早う来てたもれ。虫に手を」
乗物の両脇には徒歩女中が三人ずつ立って、警護しているのに、怪しき若衆を度々見る事も、今こうして毒虫に螫された事も、少しも心着かずにいる。