Japanische Klassiker mit Furigana
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おそろしきさくご
恐ろしき錯誤
江戸川 乱歩
Lesen Sie 恐ろしき錯誤 (おそろしきさくご) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.075 Zeichen · 46 Bildschirme
それは実際不思議なことだった。
何一つ彼女を猛火の中へ導く様な理由というものがなかった。変事の為に遠方から集って来た親族の人達の間には、これはきっと、あまり恐ろしい出来事の為に逆上して、気が変になったせいだろうという説が勝を占めた。
「私の知っているあるお婆さんは、そら火事だというのに、うろたえて了って、いきなり米櫃の前へ行って、丹念にお米を量っては桶の中へ入れていたって云いますよ。ほんとうに、お米が一番大切だと思ったのでしょうね。こんな時には、よっぽどしっかりした者でも、うろたえて了いますからね」
妙子の母親は、ともすれば、咽び相になるのを堪え堪えして、鼻の詰った声で、こんなことを云ったりした。
「可愛い女房が、若い身空で、しかも子供まで残して、死んでしまった。これ丈けで、もう男の心を打ひしぐには十分過ぎる程十分なんだ。その上に、見るも無慚なあの死に方、……君にあいつの死顔を一目見せて遣りたかった。若し、あの死骸を前に置いて、君にこの話が出来るんだったら、まあどんなに深刻な、劇的な効果を収め得た事だろう。
あいつの死骸は真黒な一つの塊に過ぎなかった。