Japanische Klassiker mit Furigana
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おそろしきさくご
恐ろしき錯誤
江戸川 乱歩
Lesen Sie 恐ろしき錯誤 (おそろしきさくご) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.075 Zeichen · 46 Bildschirme
併し、そんなことが何になるものか。友達の細君の不幸を慰める為にその側へよって口を利くということは、至極あたり前のことだからね。仮りに一歩を譲って、その囁きが誰かに洩れ聞かれたとしても、それはその男にとってちっとも恐ろしいことじゃない。『私は真実そう信じて云ったまでのことです。その為に、奥さんが火の中へ飛び込んで、自分で自分を焼き殺したって、それは私の知ったことじゃありません。あなたは、そんな狂気じみたことを私が予期して居ったとでも仰有るのですか』そういえば立派に申訳が立つではないか。何という恐ろしい企みだ。その男は確かに人殺しの天才だ。エ、そうじゃないか、野本君」
北川氏は、ここでもう一度言葉を切った。そして、これから愈々俺の復讐を実行するのだぞと云わぬばかりに、ペロペロと脣を嘗め廻した。
彼は、半殺しの鼠を前にした猫の様に、如何にも楽しそうに、物凄い目つきで野本氏の顔をジロジロ眺めるのだった。
北川氏が野本氏と親しくなったのは、勿論学校が同じだったという点もあるが、それよりも、一人の女性を渇仰する青年達が、類を以て集った、そのグループの中の一員として、お互に嫉視し乍ら近づき合ったということが、より重大な動機を為していたのだった。