Japanische Klassiker mit Furigana
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おそろしきさくご
恐ろしき錯誤
江戸川 乱歩
Lesen Sie 恐ろしき錯誤 (おそろしきさくご) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.075 Zeichen · 46 Bildschirme
野本氏は優勝者の満悦を以て、いそいそと帰省の途に着いた。もうすっかり自分のものだという安心が、妙子との暫しの別れを却って楽しいものに思わせた。
遠方からの手紙の遣り取りによって、二人の間が猶一層接近するであろうことを予想しながら、野本氏は東京をあとにした。
ところが、野本氏の帰省中に、俄然局面が一転した。野本氏があれ程も自分のものだと信じ切っていた妙子が、彼には一言の断りもなく、一同がまさかこの男がと、高を括っていた、あのむっつりやの北川氏に嫁して了ったのであった。
北川氏の喜悦に反比例して、野本氏の忿怒は烈しいものだった。それは忿怒というよりも寧ろ驚愕であった。信じ切っていたものに裏切られた人の驚愕であった。これ見よがしに振舞っていた手前、彼は友達に合す顔がなかった。
併し、これといってハッキリした約束を取交している訳ではなかったので、どうにも抗議のしようがなかった。違約を責めようにも、違えるべき約束をまだしていないのだった。洩す術のない憤りは野本氏の人物を一変させて了った。
それ以来彼は余り物を云わなくなった。これまでの様に友達の家を遊び廻らなくなった。