Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おそろしきさくご

恐ろしき錯誤

江戸川 乱歩

Lesen Sie 恐ろしき錯誤 (おそろしきさくご) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.075 Zeichen · 46 Bildschirme

Aozora Bunko

始めの間はボンヤリしたあるかなきかの疑だったものが、徐々に、ほんとうに徐々に、事実らしくなって行った。そして、今ではそれが『らしく』などという言葉を許さぬ、火の様に明かな事実となって了った。今までは心の中の問題だったものが、余りに明瞭な証拠物の発見によって、もうどうにも動きのとれぬ事実となって了った。どっちみち、僕はこの苦しみを味わねばならぬのだ。どうせ苦しむのなら、多分僕よりも幾層倍打撃を蒙るであろう讐にも、この事実を知らせてやろう。そして、そののたうち廻る有様を眺めてやろう。僕はそう決心したのだ。

その当座、僕は毎日毎日その男の此上もなく巧妙な復讐のことより外は考えなかった。或は憤ったり、或は感心したりしながら、そればかりで頭の中が一杯になっていた。ところが、ある日、地平線の遙か彼方にぽっつりと浮んだ、一点の怪しげな黒雲の様に、ふと妙な考が浮んだ、成程、あの男は完全無欠な手際で復讐を為しとげた。併し、若し妙子が彼の信じている様に、彼を嫌っていなかったとしたらどうだ。いや、却って彼を愛していたとしたらどうだ。……そんな事がある筈はない。それは取り止めもない妄想だ。