Japanische Klassiker mit Furigana
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うらみなきさつじん
恨なき殺人
宮島 資夫
Lesen Sie 恨なき殺人 (うらみなきさつじん) von 宮島 資夫 (みやじますけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.611 Zeichen · 56 Bildschirme
女は久しい前から、野口と言う坑夫の情婦になっていることを、彼は知っていたのであった。
すべてが馬鹿気て話にならないと思うと、彼は、昨夜からの勇気も、一遍に抜けそうになってしまった。けれども、世の中はこんな風に馬鹿げたものに出来ているんだ、悄気たって何になる――と思い返した。それよりも汗でも絞って頭を軽くして、今日一日を気持よく暮したいと思うと、彼はすぐに馳けはじめた。
彼は何事も思う暇のないほど馳け通した。酒臭い汗は滝のように流れ出て、上衣や脚袢までズクズクに濡れてしまった。
池田が見張りに着いた時は、宿直の者はまだ起きていなかった。
彼はソッと中に入って、自分の棚から着替えの現場着を出すと、汗に濡れた着物を脱ぎ捨てて、前の清水で手拭を絞っては、べとつく汗を拭きとった。
爽やかな朝の大気が、赤くなった彼の肌に心地よくしみ渡った。まだ日の出ない夏の空は、白く美しく輝いていた。彼は大きな口を開けて、その澄み切った大気を惜しむように、幾度か深く吸い込んだ。
草鞋や脚袢まではき替えると、池田は何時ものように、物置きから莚を引き出して、坑口の上にそれを敷いて静かに寝ころんで、ジッと空を見上げていた。