Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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うらみなきさつじん

恨なき殺人

宮島 資夫

Lesen Sie 恨なき殺人 (うらみなきさつじん) von 宮島 資夫 (みやじますけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.611 Zeichen · 56 Bildschirme

Aozora Bunko

「事務所からこれを頼まれて来やした」と、一通の手紙を渡した。

それは東京の鉱主から、池田に宛てたものであった。

鉱主から直接に来る手紙に碌なことのあった例しはないので、池田は妙な顔をして、ポケットに入れてしまった。杭木の領収書を受け取った馬子が、再び熱い日中を麓の方へ下って行ってから、彼は一人で廃坑の前に登って行った。其処には涼しい蔭と、坑内から吹いて来る冷たい風が絶えずあった。彼は其処に寝転ぶと、ポケットから手紙を出して、封を切って読み始めた。中には、

――君はこの二三日前に病気と称して現場を休んで、村の茶屋で遊んでいたそうだが、何の理由にせよ、そう言う行動は甚だ怪しからん事に思う。直ぐにも解雇すべきところだが、縁類にもなっていることだから、一応君の母親を呼んで注意だけして置いた。今後は断じて謹慎するか、然らざれば此の際辞職する方が、君の名を傷けないことになるであろう――と、こんな事が書いてあった。

碌でもないことだろうと予想はしていたが、池田はこの手紙を読むと、最初は怒るよりも呆れて了った。一週間ほど前に、病気で現場を休んだことは事実であった。