Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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うらみなきさつじん

恨なき殺人

宮島 資夫

Lesen Sie 恨なき殺人 (うらみなきさつじん) von 宮島 資夫 (みやじますけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.611 Zeichen · 56 Bildschirme

Aozora Bunko

二

村境の峠を登った時は、空は赤くなっていた。涼しい夕風が吹き初めたので、木々の葉は蘇ったように、サラサラと鳴っていた。

峠の下の茶屋の前に来た時に、池田は、

「ともかく俺は此処で飲んで行くよ、帰ったって喧嘩も出来ないで、ふくれていたってつまらないから」と言って立ち止った。

「今夜飲めば、それこそ何か言われる種だぞ」

沼田は気遣わしそうに言った。

「種でもいいさ、奴等が何か言ったら、それをきっかけに此方だって何かやるさ」と池田が笑ったので、

「それもそうだな、まあ遊んで行け、俺も後から来るかも知れない」と言って、沼田は左の方の畑を登って行った。

池田は茶屋の二階に登ると、無暗に酒を飲んだ。

其処からは、事務所の屋根や障子もよく見えた。彼は少し酔うと、大きな声で歌をうたった。燈火のつく頃には、彼の周囲で手足の太い女たちが、踊ったり笑ったりしていた。

二

泥のように酔いつぶれて、寝かされたのは何時のことか、彼は覚えがなかった。明方に眼が覚めた時は、腹の中が火のように熱くなって、汗はダクダク湧くように流れていた。

部屋の隅にかけたランプのホヤは曲って、中の火が赤黒く見えるほどすすけていた。