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Japanische Klassiker mit Furigana

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おんをかえすはなし

恩を返す話

菊池 寛

Lesen Sie 恩を返す話 (おんをかえすはなし) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.018 Zeichen · 19 Bildschirme

Aozora Bunko

甚兵衛は、その日ほとんど太刀打ちをしなかった。自分の前に進んで行く惣八郎が激しく戦ったからである。彼はそうして、終日惣八郎の手痛い戦いを見物するばかりであった。

二月二十八日は、いよいよ総攻めの日ときまった。城を囲んでいる九州諸藩の軍勢四万三千人のうち、原城の陥落を望まなかったのは、恐らく甚兵衛一人であったろう。無論、寄手のうちに交っている切支丹宗門の者や徳川幕府に恨みを含んでいる者は、一揆の長く持ち堪えることを望んでいたかも知れない。しかし、そうした宗教的な政治的な動機を離れて、自分の独自の心で、甚兵衛は原城の陥らぬようにと祈っていた。

「もう、軍も今日限りじゃ。城方は兵糧がない上に、山田右衛門作と申す者が、有馬勢に内応の矢文を射た」という噂が人々の心を引き立たせた。功名も今日限りじゃ。身上を起すには今日を逸してはならぬと寄手は勇み立った。

甚兵衛は今日限りだと思った。今日を逸して泰平の世になったら、命を助けてもらったほどの恩を返す機会は、絶対に来ないことを知ったからである。

その日、惣八郎はやはり細川勢の魁であった。いつも必ず魁をする甚兵衛が、惣八郎に位置を譲ったからである。