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Japanische Klassiker mit Furigana

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おんしゅうのかなたに

恩讐の彼方に

菊池 寛

Lesen Sie 恩讐の彼方に (おんしゅうのかなたに) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.824 Zeichen · 46 Bildschirme

Aozora Bunko

敵手が倒れてしまった瞬間に、市九郎は我にかえった。今まで興奮して朦朧としていた意識が、ようやく落着くと、彼は、自分が主殺しの大罪を犯したことに気がついて、後悔と恐怖とのために、そこにへたばってしまった。

夜は初更を過ぎていた。母屋と、仲間部屋とは、遠く隔っているので、主従の恐ろしい格闘は、母屋に住んでいる女中以外、まだだれにも知られなかったらしい。その女中たちは、この激しい格闘に気を失い、一間のうちに集って、ただ身を震わせているだけであった。

市九郎は、深い悔恨にとらわれていた。一個の蕩児であり、無頼の若武士ではあったけれども、まだ悪事と名の付くことは、何もしていなかった。まして八逆の第一なる主殺しの大罪を犯そうとは、彼の思いも付かぬことだった。彼は、血の付いた脇差を取り直した。主人の妾と慇懃を通じて、そのために成敗を受けようとした時、かえってその主人を殺すということは、どう考えても、彼にいいところはなかった。彼は、まだびくびくと動いている主人の死体を尻眼にかけながら、静かに自殺の覚悟を固めていた。するとその時、次の間から、今までの大きい圧迫から逃れ出たような声がした。