Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あくにんのむすめ

悪人の娘

野村 胡堂

Lesen Sie 悪人の娘 (あくにんのむすめ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.405 Zeichen · 27 Bildschirme

Aozora Bunko

社会的地位と申しますと、学校を出たての、一番下っ端の会社員で、相手が乞食だろうが泥棒だろうが、少しも驚くことではありません。言われる通り、二三歩遠退いて、灯の疎らな本所の河岸の方を向いたまま、

「サア、これでよかろう」

相手になってやるぞと言わぬばかりに、後を促します。

「失礼な事を申し上げてすみませんが……何を隠しましょう、私は今重大な敵に監視されて居りますので、正面にお話をして、貴方に御迷惑があるといけないと思ったので御座います。こうして居る内にも、どこに、どんな眼があって、私共を見張って居るかわかりません」

段々気味の悪いことを申しますが、その代り、この男は本当の乞食でない事だけは確かです。乞食にしては言葉が知識的で、髯こそ茫々と生えて居りますが、物越し態度何処となく、贅沢に育った社交的な人間らしいところがあります。

「実は」

乞食は言い憎そうに言葉を淀ませます。

「もう少しすると、この橋へ一人の娘がやって参ります。その娘の上に、どうかしたら、思いもよらぬ災難が降りかかるのではないかと、どうも心配でたまりません」

「例えば、どんな事が?……」

「身を投げるとか――悪者共に襲われるとか――」