Japanische Klassiker mit Furigana
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あくにんのむすめ
悪人の娘
野村 胡堂
Lesen Sie 悪人の娘 (あくにんのむすめ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.405 Zeichen · 27 Bildschirme
――百円札に未練が無いではありませんが、手間取って居る内に、乞食に頼まれた娘とやらが、橋の上に現われるかも知れず、元々自分の金ではないと思うせいか、鳴海司郎あまり執着もせずに、そのまま踵を返して、元の橋の上に戻りました。
それから何時間経ったでしょう、水の黒さが身にしむばかり、人足も大分途絶えて、名物の空っ風、花を散らした名残りを吹いて、サッと橋の上の砂塵を吹きあげる頃でした。
と、下谷の方から一人の娘、ゴム草履の刻み足、四方に気を配る風情で、橋の上へかかりましたが、一わたりその辺を見廻すと、そのまま細々と肩を狭めて、鳴海の側をスーッと通ります。
仮橋の欄干に裸電灯があるにしても、元より申わけばかりの疎い光り、通りすがりの人の顔が、よくは見える筈もありません。がその時鳴海司郎の見た娘の顔ばかりは、夜の闇も包み切れなかったのでしょう、真に輝くばかりの美しさでした。
「これは容易でない」
もう一度つぶやき乍ら、鳴海の足は思わず娘の後を追って居りました。
西から東へ、東から西へと、二三回、娘は橋の上を往復しました。五間ばかりの間隔を置いて、鳴海司郎が絶えずあとをつけて居ることは、一向気が付いた様子もありません。