Japanische Klassiker mit Furigana
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あくむ
悪夢
豊島 与志雄
Lesen Sie 悪夢 (あくむ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.930 Zeichen · 32 Bildschirme
それも私ばかりではない。誰も彼もみな、干乾びて痩せ細るか、脂肪がたまってぶよぶよと肥るかして、溌溂とした体力を持ってる者は一人もいない。激しい残忍さと温良さとを持ってる農夫、強い抱擁力を持ってる田舎娘、それらを思い出させるような顔付は、一つとして見当らない。精神は亡びるなら亡びるがいい、熱い血の流れてるこの肉体だけは、どんなことがあっても亡ぼしたくない! そう私は叫びたくなってくる。
そして私の胸の底から、何だか形態の知れない強暴なものが、むらむらと湧き上ってくる。何物へでもよいから、力一杯にぶつかってゆきたくなる。四股を踏みしめて、街路樹と押しっくらがしてみたい。眼の前につっ立ってる、板塀や石壁や屋根などに、躍り上り攀じ登ってみたい。喉が張り裂けるまで、声の限りに叫んでみたい。自分の前を通る人の頭に、握りしめた拳固を一つ、ぽかりと喰わしてみたい。動物園で、狭苦しい鉄の檻の中を、おとなしく歩き廻ってる猛獣を見ると、自分の方で堪らなく苛立ってくる。
丁度そういう気持へ、じりじりと落ちてゆきそうな気がしてる時のことだった。それは月初めの第一の日曜日で、下宿料や其他の払いを済した後に、十六円余り残っていて、そのうちから月の小遣を差引いて、余分の金で、何をしようかと――着物も買いたかったし、芝居も見たかったし、