Japanische Klassiker mit Furigana
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かなしいごかい
悲しい誤解
豊島 与志雄
Lesen Sie 悲しい誤解 (かなしいごかい) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.139 Zeichen · 23 Bildschirme
然し誰の意見も、新聞記事の埓外には出ず、つまらぬ臆測をこね廻してるに過ぎなかった。そして不思議なことには、原子爆弾を怖れながらも、戦争を望むかのような気分が漂っていたのである。日本は戦争の当事者ではないから、もう原子爆弾は落されない、という想定のもとに、戦争は起るかも知れないと冷淡に忖度してるのである。平和はどこへ行ったのであろうか。
「それでも、戦争はどうなんだい。」と笠原は言う。
「戦争だって、僕には何の関係もないさ。」
私の憂欝は皮肉になり、私はもうそれきり口を利かず、自分のデスクに戻った。
横手の席が空いていた。堀田の席だ。専務に呼ばれたきり、長く戻って来なかった。おかしな男である。事務が粗漏でそして怠慢、というのが彼に対する重役連中の一致した意見だ。しばしば叱責されたが、いつも彼は平然としていた。朝の出社に遅れることはあっても、夕方の帰りを急ぐことはなかった。口数が少く、ものぐさで、ひとを喰ったようなところがある。
その堀田が、ふだんから蒼白い顔を、なおすこし蒼ざめさして、席に戻って来た。卓上に肱をつき、へんな苦笑を浮かべて、煙草を吹かした。