Japanische Klassiker mit Furigana
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せきべつ
惜別
Lesen Sie 惜別 (せきべつ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.984 Zeichen · 178 Bildschirme
私は、山を登りすぎたのである。まことにつまらない思いで、芝生の上に腰をおろし、空腹を感じて来たので、宿で作ってもらったおにぎりを食べ、ぐったりとなって、そのまま寝ころび、うとうと眠った。
幽かに歌声が聞えて来る。耳をすますと、その頃の小学唱歌、雲の歌だ。
瞬く間には、山をおおい、
うち見るひまにも、海を渡る、
雲ちょうものこそ、奇すしくありけれ、
雲よ、雲よ、
雨とも霧とも、見るまに変りて、
あやしく奇しきは、
雲よ、雲よ、
私は、ひとりで、噴き出した。調子はずれと言おうか、何と言おうか、実に何とも下手くそなのである。歌っているのは、子供でない。たしかに大人の、異様な胴間声である。まことに驚くべき歌声であった。私も小学校の頃から唱歌は、どうも苦手で、どうやら満足に歌えるのは「君が代」一つくらいのものであったが、それでも、その驚くべき歌の主よりは、少し上手に歌えるのでなかろうかと思った。黙って聞いていると、その歌の主は、はばかるところ無くその雲の歌を何遍も何遍も繰りかえして歌うのである。或いはあの歌の主は、かねがねあまりに自分が歌が下手なので、思いあまって、こんな人里はなれた山奥でひそかに歌の修行をしているのかも知れない、と思ったら、同様に歌の下手な私には、そぞろその歌の主がなつかしくなって