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Japanische Klassiker mit Furigana

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さんじのあと

惨事のあと

素木 しづ

Lesen Sie 惨事のあと (さんじのあと) von 素木 しづ (しらきしづ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.258 Zeichen · 23 Bildschirme

Aozora Bunko

楯井さんは、此の知らせを受けて、妻と三人の子供を残して兎に角すぐに出かけた。彼は、非常に驚いたけれども、なんとなく信ずることが出来なかった。そんなはずが、けっしてないような気がしてならなかった。彼は、そんな事が、決して世の中にありうることではないと思っていたのではなくて、唯この山奥の新開地に、そんな事をする人がいようとは、どうしても思われなかったのである。

楯井さんは、自分の住んでいるこの山奥を、何という安らかな、そしてなつかしい所だろうと、いつも考えているのであった。

彼が考えている浮世というもの、罪悪などゝいうものからはなれた、大きな自由な安心な、たのしい箱のなかへでも入ったようなつもりで、この山奥の生活をしているのであった。毎日山鳥の啼く音鶯の囀る声、雉子などが樹から樹へ飛びうつるのを、何の慾心なしに見聞している。そして絶えず新らしい木の香や、土の匂が彼にさわやかな清い心を与えているのであった。

楯井さんが、どうしても信ずることが出来ないと思いながらも、出かけたのはもう日の暮れ方であった。ほの暗く一帯に暮れて行く荒地の行く道には、そここゝに笹の根や木の株、草や木の枝などを焼く火が、はっきりと見えて、山道とはいうものゝ少しも淋しくない。