Japanische Klassiker mit Furigana
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おろかないちにち
愚かな一日
豊島 与志雄
Lesen Sie 愚かな一日 (おろかないちにち) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.045 Zeichen · 29 Bildschirme
転地してから二ヶ月、最近感冒から気管支に加答児を起した危険な二週間、その間のことを考えた。殆んど看病ばかりに日を暮している一彼女、その彼女の肉体の忘られたような性的生活、……そして今、自ら知らずして覗き出したその肉体の魅力。彼は何とも云えない淋しい気になって云った。
「もうお寝みよ。」
「ええ。」
すぐ彼の前に展べられた妻の寝床から、彼は反対の方に寝返りをした。眠ろうと思って眼をつぶったが、頭のしんが妙に冴え返って眠れなかった。
「瀬川君は?」と彼はふと尋ねてみた。
「もうお寝みなすったわ。」と後ろで妻の答える声がした。
彼はまた眼を開いて、一日のことをぼんやり思い出した。そうしてるうちに、襖の笹の葉模様を見つめている眼の方に注意が向いてきた。その襖を距て、六畳の一室を距てて、安らかに眠ってる瀬川の様が頭に浮んできた。するとそれがしきりに気になり出した。彼は深く息をして、左手を額にあてた。――瀬川がこの同じ屋根の下に眠ってるのが、どうしてこう気にかかるんだろう。瀬川が安らかに眠ってるのが、どうして自分の神経に触るんだろう。――そう考えれば考えるほど、益々彼は眠れなくなった。