Japanische Klassiker mit Furigana
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あいとにんしきとのしゅっぱつ
愛と認識との出発
倉田 百三
Lesen Sie 愛と認識との出発 (あいとにんしきとのしゅっぱつ) von 倉田 百三 (くらたひゃくぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 64.420 Zeichen · 129 Bildschirme
今や私には気味悪い厭世思想が心の底に萌している。この思想は蕭殺たる形を成して意識の上に現われては私を威嚇したり揶揄したりする。
そこでM町を去ってF村へ鞍替えをしたがここもできたことはない。無限に続く倦怠は執念深きこと蛇のごとくここでも私に付き纏う。孤独の寂し味のなかに包まれて、なんのことはない、餅の上に生えた黴のようなライフを味おうている。
M町から帰った夜、兄と一つコップの酒を飲んでいろいろ語った。蚊帳のなかに蟠る闇の裡に私らのさざめきは聞こえた。黙契の裡に談話を廃して後しばらくして、「蛙が鳴くなあ」兄の声はしめやかであった。
「独歩がいったごとくに宇宙の事象に驚けるといいなあ」と兄がいった。私は腹のなかで頷いてる。そして、
「現象の裡には始終物自爾がくっついてるのだから驚いた次の刹那にはその方へ回って、その驚きを埋め合わせるほどの静けさが味わいたい」と私がいった。
「それは理知の快味だ。驚いた刹那は争うべからざる驚きの意識で占領された刹那じゃないか。その意識こそ尊い意識だ」
「森鬱として、巨人のごとき大きな山が現前したとき、吾人は慄然として恐愕の念に打たれ、その底にはああ大なる力あるものよとの弱々しい声がある。