Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

あいのごとく

愛のごとく

山川 方夫

Lesen Sie 愛のごとく (あいのごとく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.908 Zeichen · 210 Bildschirme

Aozora Bunko

茅ヶ崎の米軍キャムプに出かけるのも、彼はその日が最初だった。横浜を立つとき、街はおびただしい赤い光にまみれていた。夕映えは彼らの行先の西空をひろく染めて、金色にふちどられた雲の峯の下から、残照のまっすぐな光が車の輻のように放射状に幾条も空へのぼっていた。

汚緑色の幌をつけた米軍トラックは、彼らを乗せおわると、はげしいその大夕焼けに向ってスタートした。火事のような桃色の光が溢れた駅前の広場はすぐ建物のかげにかくれ、街は西日にかがやきながら次々と道の両側を遠ざかった。

落日は、信二に、ふしぎな渇望と喪失の味をあたえていた。あかあかと燃える夕焼けは彼を迎える次の季節の門のようで、同時にそれはあるものからの別離を示しているようにおもえた。だが、彼は過去を考えていたのではなかった。未来に向っていそいでいる現在だけがあった。まる四年間の平和がすぎたその年、十七歳の信二に、毎日は彼が追いつくよりも早くすぎて行った。兄のお古の小さな学生服は肱と背が黒く光り、彼はいつも空腹だったが、しかしその惨めさのなかで疲れていたのではなかった。彼はいそいでいた。毎日、越えなければならぬものばかりがあり、越えた向うになにがあるかなどは考えたことがなかった。