Japanische Klassiker mit Furigana
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あいのごとく
愛のごとく
山川 方夫
Lesen Sie 愛のごとく (あいのごとく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.908 Zeichen · 210 Bildschirme
あの女、と唐突に彼は思っていた。そのころ、彼は女がスロオ以外は絶対に踊らず、それも金髪の伍長としかけっして踊ろうとしないのに気づいていた。女は、いつもそして喪服のような黒い服を着ている。あの野卑でそうぞうしい原色の喧騒の渦のなかで、そして、われわれの屈服のシンボルにちがいないその女たちのなかで、ふとその存在が信じられないような気のする女。ひとりの幻想の人物にちかい女……。おれが、安達の申し出をいいことにステージに出るのに乗り気なのも、そこにいれば彼女を充分に見ることができるからではないのか。
「黒の女」はバアとは逆の遠い隅のテーブルに坐っていた。黒いドレスを着て、いつもと同じように、彼女は楽団がスロオを演奏するときだけ伍長に腕をとられフロアに進み出てきた。トロットやルンバのとき彼女は先立って席へかえった。ジルバやヴギがはじまると、首をかしげ、肩をひいて笑った。伍長も従順にそのあとについて席にもどった。どのステージも同じだった。ただ、その夜は髪をアップにしていた。夜会巻きというのか、束ねた毛をたかくあげて、背を向けると呼吸をのむような見事な襟脚が二つならんでいた。