Japanische Klassiker mit Furigana
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あいのごとく
愛のごとく
山川 方夫
Lesen Sie 愛のごとく (あいのごとく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.908 Zeichen · 210 Bildschirme
演技の果て
日ざかりは光が眩しかったが、いつのまにかなまあたたかい初夏の宵にかわっていた。かすかな風も出てきて、街路を歩いて行き、見上げるとまだビルの上にうす青い晴れた空がのこっていた。
「すてきだったわ、今日は」私が足をとめると、つれの女は腕をときながらいった。
「とくに、君の食欲がすてきだった」
「あれは、ソースがよくできていたわね、仔牛のカツ」
頬の肉の厚い女はのんびりいい、目を光らせて塗りなおしたばかりの唇で笑う。「それでね、それで私、おかわりをしたのよ」女の口調には東北ふうのアクセントがある。わざと上品ぶって標準語をしゃべろうとするので、語尾があがる。商売がら、私は訛りについてはうるさいのだ。だが、私はなにもいわなかった。もうその女はいらなかった。私は、彼女と二十時間ちかくいっしょにいたのだ。
放送局のビルの前で私は女と別れた。背の高い女は石の舗道を五六歩そのままの方向に歩いて行き、くるりと廻れ右して私の前をそしらぬ顔で駅の方に引き返した。彼女は駅の向う側の喫茶店につとめている。淡い水いろのタイトの尻をふって、首をしゃんとあげて歩いて行く若い女には、ながい時間私とだけいた痕はどこにも見えなかった。