Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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よく

慾

豊島 与志雄

Lesen Sie 慾 (よく) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.324 Zeichen · 33 Bildschirme

Aozora Bunko

スピードをはやめて飲んだ。その僕の飲みっぷりを見やって、依田はふと首を傾げる。何を考えてるのか、不気味な存在だ。短く刈りこんだ硬い頭髪、裸になったら所々に黒子や痣がありそうな肥った胴体、贅肉のあり余った頬、皮膚の厚ぼったい手先、穏かな自己満足の眼付……一見したところ好人物らしいが、その重量のなかに非常な貪慾が潜んでいる。もうだいぶ酔ってきて、血液の多量を示す赤味を帯びている。血液の多量は貪慾の証拠だ。その方から眼を外らして、僕は煙草と酒とに頼ろうとした。自分の存在が彼の存在に気圧されて仕方がない。僕としてはダイヤか真珠しか買ってやれない気がしている千代次に、彼は戯れにせよ楊子入なんか買ってやって平然と笑っている。酒の時には千代次、冗談の時には千代ぼう、甘い話には千代ちゃんと、言葉の使い分けをする。彼女に対して君としか云ったことのない僕には、それらの呼び方が妬ましく聞える。が彼女には平気らしい。ヨタさんという綽名で依田に受け応えしている。ヨタさんと云われる度に、彼は得意げに微笑する。その微笑が僕の心を刺す。卓の上には寄せ鍋が煮立っているが、床の間の青銅の鉢には、霧藻のかかった松の枝が寒そうにくねっている。