Japanische Klassiker mit Furigana
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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
Lesen Sie 我が愛する詩人の伝記 (わがあいするしじんのでんき) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 116.728 Zeichen · 231 Bildschirme
かれは耳をかたむけ、そして頭の中をさぐって他人の娘が自分をお父さんと呼んでくれる嬉しさを、ついに、しっかりと捉えることが出来た。有難い彼流にいえばめぐみの一種類であった。かれはこのヒミツの愛称の内容にも次第に肯ずいた。彼女は言った。わたくしがお父さまと申し上げることが出来、そこに不安を感じない嬉しさはやはりこの称えによるもっとも相応しい私自身のあまさでございましょうと書かれてあった。
太田村山口の村端れに、ある日はじめて新雪がちらついた昼すぎ、一人で雪を面白がって歩く少女が、小高い光太郎の山小屋をめあてに元気に歩くすがたが見られた。身のつくりも東京風であり小柄できりっとした眼付には、おさえきれない悪戯者らしいしかも無邪気な微笑をうかべ、畝道を歩いていた。
光太郎は雑炊を炉で煮ていた。
雪をはらう気はいがし、光太郎は誰方かと立たないで呼びかけた。表の人は黙って立ったままだった。光太郎は戸を開けた間際、めまいをもよおすような若い女の肉顔を眼一杯にいれた。そして次ぎにはすぐあの人だなと思った。いつも手紙をくれるたびにお父さんと書く少女だったのだ。めまいは止み少女は炉の前にお行儀好く坐った。