Japanische Klassiker mit Furigana
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あるひ
或る日
宮本 百合子
Lesen Sie 或る日 (あるひ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.119 Zeichen · 21 Bildschirme
――そうでしょう? あの人全体少し何だか工合がわるいんですもの」
彼等は再び沈黙した。
置時計の小刻みなチクタクが夜の静寂を量った。
翌朝、さほ子は重大事件があると云う顔つきで、朝飯を仕舞うと早速独りで外出した。
彼女は街のポウストにれんを呼び戻すはがきを投函し、一つ紙包を下げて帰って来た。
良人は妙に遠慮勝ちな、然し期待に充ちた表情で、時々さほ子の方を見た。彼女は黙り返って落付かず、苦々しげな気の重い風で、どうでも好い事にいつ迄もぐずぐずかかっている。
千代と視線を合わさず昼飯をすますと、さほ子は終に決心した様子で、
「千代や」
と娘を呼んだ。
「はい」
卓子に肱をつき、ぼんやりしていた彼は、悠々立って居間に入って仕舞った。
さほ子は良人には行かれ、一方からは千代のあでやかな白い顔が現れるのを見ると、愈々進退谷まった顔になった。彼女は、真正面に目を据え、上気せ上った早口で、昨夜良人と相談して置いた転地の話を前提もなしに切り出した。
彼女のむきな調子には何か涙が滲む程切迫つまったところがあった。余程急に出立でもしなければならないのか、又はその転地が夫婦にとって余程の大事件であるか、何方にしろ只ごとではないと思わせた動顛と苦しさとが彼女の全身に漲っていたのである。