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Japanische Klassiker mit Furigana

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あるおとこのしゅき

或る男の手記

豊島 与志雄

Lesen Sie 或る男の手記 (あるおとこのしゅき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 43.279 Zeichen · 86 Bildschirme

Aozora Bunko

後で分ったことだが、俊子は既にその時から、私の珍らしい外泊や帰宅後の様子などによって、一抹の疑惑を懐かせられて、そのために却って、私の行動については一切尋ねなかったものらしい。でもその時私は、そんなことには少しも気付かなかった。

私は松本に対して、皮肉な調子に出てしまった。

「だいぶ面白い話があるそうじゃないか。」

松本はちらと私の方を見たが、すぐに眼を伏せてしまった。それへ、俊子が気忙しなく尋ねかけた。

「え、光子さんはいつ頃帰ったのですって? どうしてあなたにそれが分りましたの?」

松本は一寸考えてから答えた。

「私は昨日から、光子さんの行方が心配でならなかったんです、何だかひどく苛立ってるようでしたから。それで、今朝また河野さんの家へ電話をかけてみました。所がまだ帰っていないとの答えです。それから、晩になっても一度かけてみました。出て来たのは確かに光子さんです。月岡さんおいでですか、と私が云うと、はい、という返辞でしょう。私はすっかり喜んで、松本です、と思わず云ってしまったのです。すると、それからいくら呼んでも返辞がありません。でも確かに光子さんです。