Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるおとこのしゅき

或る男の手記

豊島 与志雄

Lesen Sie 或る男の手記 (あるおとこのしゅき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 43.279 Zeichen · 86 Bildschirme

Aozora Bunko

「まあ君の理想はいいとして、一体光子さんの方は、君に対してどうなんだろう?」

「私を愛しているようです。ただ私が苦痛なのは……。」

彼はまた口を噤んで私の眼を見た。

「何が苦痛だって?」

「一昨日私の所へ飛び込んできたのは、本当に私が恋……私を愛してるからか、それとも一時河野さんを避けるためにぼんやり頼ってきたのか、その辺がよく分らないんです。」

「君が苦痛だというのは、ただそれだけなのかい。」

「それだけって……。」

「君は光子さんをどんな女だと思ってるんだい。」

「比較的真正直な怜悧な……いや何だかよく分りません。」

彼は急に苛立ってきた。私はそれをなおつっ突いてやった。

「例えば、河野さんと実は関係がついていたり、北海道でいろんなことがあったり、そんな風な奔放な女だったとしたら?」

「え、そんな女でしょうか。」

「いやそれはただ仮定だよ、君の気持をはっきりさせるためにね。で、もしそうだったとしたら、それでもやはり君は、彼女を愛し続けてゆけるのか。」

私の執拗な眼付に対して、彼は顔を伏せて暫く唇をかみしめていたが、やがてきっぱりと云った。

「愛し続けてゆきます。責任上愛し続けるつもりです。