Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおとこのしゅき
或る男の手記
豊島 与志雄
Lesen Sie 或る男の手記 (あるおとこのしゅき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 43.279 Zeichen · 86 Bildschirme
一枚のペーパーに万年筆で細かく書かれたものだった。
松本さん、何もかも許して下さいまし、ほんとに何もかも。私はあなたがお許し下さることは存じておりますが、やはりこうお願いしずにはいられませんの。
私はあの時二度とも、次の室からすっかり聞いておりました。あなたが一日考えてからと仰言ってお帰りなすったその一日が、私にはどんなに苦しかったか分りませんわ。そして次の朝いらして、やはり私は光子と結婚したいと仰言った時、私はぞっと震え上って逃げ出しました。恐ろしくて恐ろしくてなりませんでしたし、次には悲しくてたまりませんでした。私は生れて初めて本当に心から泣きましたの。
私はもうとてもあなたにはお目にかかれませんわ。この手紙が届く頃には、私は他の処へ行っていますでしょう。どうか行方を探さないで下さいまし。お目にかかれる気持になりましたら、私の方からあなたの所へ参ります。ただそれまでは、どうしてもいけませんわ。
今になって私はあなたのお心がようく分ったような気が致しますの。ほんとに何もかもお許し下さいまし。
光子
中身は月日も宛名もないただそれだけのものだった。私はくり返し読みながら、いつまでも顔が上げられなかった。