Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるあきのむらさきしきぶ

或る秋の紫式部

岡本 かの子

Lesen Sie 或る秋の紫式部 (あるあきのむらさきしきぶ) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.007 Zeichen · 11 Bildschirme

Aozora Bunko

まあ今日は此の儘、帰りますから、あとでこの色紙を奥様に差し上げて下さい。さようなら」

(妙な美男、家を振り返り振り返り残り惜し気にとぼとぼと下手へ入る。老侍女、手に色紙を持ったまま、暫らく呆れたように見送っていたが、やがて気がつき、部屋へ戻る)

老侍女「奥様、奥様」

式部「なんですか」(式部、几帳から出て来る。黙って色紙を受取ろうと老侍女へ向って手を出す)

老侍女「奥様、ほんとに妙な人じゃございませんか。相当、いい男の癖に、何だか判らない事ばかり言って」(色紙を渡す)

式部「ああ、もう、話さなくっても、みんな陰で聴いていたよ。ありゃ、なんでもないんだよ。恋をするにも真正面に相手にぶつかって真心を打ち付ける気魄も無くなり、ただふわふわ恋の香りだけに慕い寄る蝶々のような当世男の一人さ。あっちの花で断られれば、こっちの花に舞い下ってみる。しかし、恋歌は流石に手に入ったものだね」(口の中で読んで、色紙を破って捨てる)

老侍女「蝶々としたらほんとにいやらしい、暇つぶしの蝶々でございますねえ」

式部「けども、また、いじらしいところもある蝶々さ、そうお憎みでないよ」

(式部再び机に向って筆を執る。