Japanische Klassiker mit Furigana
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あるあきのむらさきしきぶ
或る秋の紫式部
岡本 かの子
Lesen Sie 或る秋の紫式部 (あるあきのむらさきしきぶ) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.007 Zeichen · 11 Bildschirme
老侍女は所在なさそうにまじまじ式部の様子を見入っている)
(夕暮に向う鐘、虫の音高くなる)
老侍女「ねえ、奥様」
式部「なんです」
老侍女「今朝ほどから随分とお根詰めじゃございませんか。それじゃあんまり、お身体にお毒でございますよ」
式部「これだけは放って置いておくれ、物を書くのは、言って見れば、まあ、わたしの虫のせいなのだからね」
老侍女「そうでございますか。何だか知りませんが、わたくしは、こちらへ参りましてから根のいい方をお二人お見受け申しました。一人は隣の庵室の聖さま、一人はうちの奥さま。恐らく世間にこれほど根のいい取組はございますまい。お一人は坐って西の方を睨みづめ、お一人は筆を握って書きづめ。やっぱり、お隣のも、虫のせいでございますか」
式部「ほ、ほ、ほ、お隣のは虫は虫でも、だいぶ、真剣な虫のせいのようだね」
老侍女「一たい、お隣の聖さまは、ああ昼も夜も坐ったきり西の方を睨んで何をしていらっしゃるんでしょう」
式部「そりゃ、行をしていらっしゃるのさ」
老侍女「行と申しますと」
式部「極楽へ行くお修行さ」
老侍女「へえ、ああやってると極楽へ行けますのでございますか」