Japanische Klassiker mit Furigana
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せんじょう
戦場
夢野 久作
Lesen Sie 戦場 (せんじょう) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.769 Zeichen · 51 Bildschirme
時と場合に依っては片目と右手だけ残っている奴でも戦線に並べなくちゃならん。ええですか。ことに今度のヴェルダン総攻撃は……まだいつ始まるかハッキリしないようですが……西部戦線、最後の荒療治ですからなあ。死んだ奴は魂だけでも塹壕に逐い返す覚悟でいないと間に合いませんぞ……ええですか……ハハハ……」
その時も私は妙に気持が重苦しくなって、胴震いが出て、吐気を催したものであったが……。
そうしてイヨイヨ総攻撃が始まった。
昨日までクローム色に晴れ渡っていた西の方の地平線が、一面に紅茶色の土煙に蔽われていることが、夜の明けるに連れてわかって来た。その下からふんだんに匐い上って来るブルンブルンブルンブルンという重苦しい、根強い、羽ばたきじみた地響を聞いていると、地球全体が一個の、巨大な甲虫に変化しているような感じがした。それに連れて西の空の紅茶色の雲が、見る見る中に分厚く、高層に、濃厚になって行くのであった。
その紅茶色の雲の中から併列して迸る仏軍の砲火の光りが太陽色にパッパッパッと飜って見える。空気と大地とが競争でその震動を、われわれの靴の底革の下へ、あとからあとから膨れ上らせて来る。