Japanische Klassiker mit Furigana
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げさくしゃ
戯作者
国枝 史郎
Lesen Sie 戯作者 (げさくしゃ) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.218 Zeichen · 21 Bildschirme
と先ず笑い、
「式服拝借致しやした。おかげをもって近所合壁年始廻りが出来やした。いや何式服というものは、友達一人持って居れば、それで萬端役立つもので、決して遠慮はいりやせん、借りて済ますが得策でげす」
自分が物でも貸したように平然として云ったものである。
呆れた馬琴が何とも云わず、程経て辞して帰ったのは、笑止千萬のことであった。
一九の父は駿府の同心、一生不遇で世を終わったが、それが一九に遺伝したか、少年時代から悪賢く、人生を僻んで見るようになった。独創の才は無かったが、しかし一個の奇才として当代の文壇に雄飛したことは、又珍しいと云うことが出来よう。
真夏が江戸へ訪れて来た。
観世音四萬三千日、草市、盂蘭盆会も瞬間に過ぎ土用の丑の日にも近くなった。毎日空はカラリと晴れ、市中はむらむらと蒸し暑い。
軽い歯痛に悩まされ、珍しく一九は早起きをしたが、そのままフラリと家を出ると日本橋の方へ足を向けた。
橋上に佇んで見下せば、河の面てには靄立ち罩め、纜った船も未だ醒めず、動くものと云えば無数の鴎が飛び翔け巡る姿ばかりである。
「ああすがすがしい景色ではある」
いつか歯痛も納まって、一九の心は明るくなっていた。