Japanische Klassiker mit Furigana
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とびらのかなたへ
扉の彼方へ
岡本 かの子
Lesen Sie 扉の彼方へ (とびらのかなたへ) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.155 Zeichen · 17 Bildschirme
実際この浜には乾いた枯蘆しかなく、水は遠浅の内海ですが、しかし沖のかたに潮満ち寄せる日中の白帆の群が介殻を立て並べたように鋭く閃めき、潮先の泡に向って飜り落ちてはまた煽ぎ上る鴎の光って入乱れる影が、ふと眼に入ると、どういうものか私は堪らなくなりました。水はしずしずと渚に寄せて青く膨れ上る。悠久な天地は悠久なままで、しかも人を置き去りにして過ぎ去って行く。人はどんどん取り残される。淋しいことだ。その時私は珪次も良人も要らない。ただ初恋のあの情熱だけを、いま一度取り戻したい。いのちにかけても、そう思いながら自分で自分の胸を抱いて座敷に立ったまま、嗚咽の声を堪え兼ねるのでありました。
夜になって闇の沖にいさり火の見えるのも苦しかった。見果てぬ夢をあまり短くして断ったそれを惜しませるような、冷たく揶揄するような沖の篝火でありました。灯は人の眼のように瞬くだけなお悪ったのです。私は早く月の夜になればいいと希いました。月の夜になるとこの辺ではいさり火を焚く舟は出さないのです。
私はふと気がついて自分の冥想をまぎらすように、
「ばあやどうしています」と良人に訊きました。