Japanische Klassiker mit Furigana
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てがみ
手紙
久生 十蘭
Lesen Sie 手紙 (てがみ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.158 Zeichen · 30 Bildschirme
四月のはじめ、村上さんはようやく満期になりました。部隊長には、
「私たちはプラウでカイマナまで行き、そこでアンボンへ帰る船を待ちます」といいますと、部隊長はたいへんにおどろいていられました。
四月十七日の朝、ミミカの川口を出ると、すぐ南へ舟を向けましたが、時季がおくれたので風はもう強く吹かず、扇子であおぐほどの弱い風で、帆をかけても船は走りません。空には雲もなく、海には小さな波もない。一日中、ギラギラと光る二枚の鏡の間に居るような気持がいたしました。
濠洲のヨーク岬までは、七十日の航海ですが、ミミカから南は敵地ですので、どこの岸にでも舟をつけて休むということができない。それに、このあたりの海岸は、海からいきなりマングローブの林がはじまる大洪水のような景色で、そういう淋しい海岸が百哩も二百哩もつづき、パプア人の村もすくないですので、こんなところを舟で通ると、すぐ人目につきます。怪しまれるようなものはなにも持っていない。網と釣道具のほか、パラン(山刀)が一梃とアカ汲みの桶だけですけれども、こんなところにインドネシアが二人もマゴマゴしているわけはないから、捕まれば、いいぬけはできませんのです。