Japanische Klassiker mit Furigana
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おしいれずいひつ
押入れ随筆
吉川 英治
Lesen Sie 押入れ随筆 (おしいれずいひつ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.648 Zeichen · 14 Bildschirme
塗料と習慣
『もちろんですよ、習慣をズルケれば、自然、翌朝は不きげんになるものね』
『まるで新婚だな。新婚でも、ちかごろ、そんな他人行儀みたいなことを、しあうかしら』
『どうか知らないが、いつまでも、初心を忘れないで、いい習慣だろ。いい事なら、もちあった方がいいと思うな。世阿弥の言葉じゃないが、初心忘るべからずだ』
『ははあ、修身科か。じゃあ君は、学校にも、修身はおいた方がいいっていう説』
『それやあ、問題がちがうじゃないか。けれど、家では、キャプテンの指針ひとつで、日々の暮し方もちがってくるぜ。航海は一日でも愉快な方がいいだろ。乗員を愉快に暮させるか否かは、キャプテンの責任にもあるんだからね。お早うも、行ッてらっしゃいも、生活のリズムさ。つまり毎日の初心だよ』
塗料と習慣
私は十八、九の頃、ドックの工員だったことがある。郵船の客船や、外国船の中へも、よく仕事に行った。それで思い出すのだが、貨物船はべつとして、船の中ほど、清潔な住居はない。サロンといわずルームといわず、じつにきれいなものである。
船は男世帯だから、洗濯物から炊事や掃除まで、すべて女手にはかからない。それでいて、あんなにピカピカしているんだから、どうも、本来のきれい好きと、暮し上手は、男の方が、まさっているんじゃないかと思われもする。