Japanische Klassiker mit Furigana
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おしえのきせき
押絵の奇蹟
夢野 久作
Lesen Sie 押絵の奇蹟 (おしえのきせき) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 58.749 Zeichen · 114 Bildschirme
お正月の羽子板も大きなのになりますと板ばかりでなく、張り抜きにした上の方を刳り抜いて、戸障子や手水鉢、石燈籠、植え込みなぞいう舞台の仕掛けものや、書き割りなどの模様を提灯の絵描きに頼むのですが、お母様はそれを御自分の押絵に合うように、お縁側に持ち出して、いろいろな胡粉で塗ったり乾かしたりしてお描きになりました。それから押絵の下絵は、お母様が錦絵を二十枚ばかり持っておいでになるのと、お弟子から借りてお写しになった沢山の下書きの中から生れて来るのでしたが、優しいのや厳めしいのが見ているうちに出来てくるその面白さ……。又は大きな大きな袱紗に、金や銀や五色の糸で縫い込まれた奇妙な形の花や蝶々が、だんだんと一つにつながり合った模様になって行くその美しさ……お父様は、そのようなお母様のお仕事を、丸い桐胴の火鉢の向うから私と一緒に御覧になるのが何よりのお楽しみのように見えました。時々は押絵の足につける竹などを削って御加勢なさるそのお優しさ。
私はまたおとなしい方で御座いましたのか、あまり泣いたりなぞしたおぼえはありませぬようで、六つか七つにもなりますと、お母様から小切を頂いて頭の丸いお人形を作ったり、お母様が美濃紙にお写しになった下絵をくり返しくり返し見たりして余念もなく遊ぶのでした。