Japanische Klassiker mit Furigana
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ゆびとゆびわ
指と指環
佐左木 俊郎
Lesen Sie 指と指環 (ゆびとゆびわ) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.538 Zeichen · 12 Bildschirme
銀座裏のカッフェ・クジャクの内部はまだ客脚が少なく、閑散を極めていた。
彼は、焦茶色の外套の襟で頤を隠して、鳶色のソフトを眼深に引き下げていた。そして、室の中を一渡り見渡してから、彼は隅のテーブルへ行って身体を投げ出した。
「いらっしゃいまし。何になさいますか?」
すぐと女給が寄って来て言った。
「うむ。何にしようかな?……」
彼は言いながら女給の手の指を視詰めた。蒼々しく痩せた細い魅力の無い指だった。
「まあ、なんでもいいよ。」
「でも……」
鉛筆で伝票を敲きながら女給は微笑んだ。
「じゃ、カクテルをもらおう。」
彼はテーブルの外に両肘を立ててソフトの外から頭を抱き込むようにした。突き立てた両腕の間から、疲れた者の表情の中に黒い大きな眼が、何かを探るように光っていた。
彼は今日も一日中、女の綺麗な指を探して廻ったのだった。東京中のあらゆる階級の女の、あらゆる指を、彼は片っ端から見て来たのだった。省線電車の中に並んだ女達が慎ましく膝の上に揃えた指、乗合自動車の吊り革を掴む女達の指。市内電車の中で手持ち無沙汰に乗車券を弄ぶ女達の指。百貨店の女店員達の忙しく動いている指。