Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ばんしゅうへいや

播州平野

宮本 百合子

Lesen Sie 播州平野 (ばんしゅうへいや) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.683 Zeichen · 214 Bildschirme

Aozora Bunko

「おばあちゃん、去年から、大さわぎしよったじゃありませんか。すっかりものあげて、わたしが来てからもう二度も水がおごりよったのに……」

「どうするの? もし物をうごかすなら、今のうちの方がいいんじゃないのかしら、夜中に騒いだりするといけないから」

母は、半信半疑の面もちでしきりに雨音に耳を傾けた。

「――いくらか、ゆりたようじゃありますまいか」

「そうかしら」

ひろ子は、出水に遭った経験が全くなかった。二百十日の颱風で、雨戸をしめた小箱のような一人住みの家の二階がふっとびそうで眠れない思いをしたことはある。けれども、水について、ひろ子はほんとに何にも分らなかった。今の気持だけからいうと、この家にまで浸水しそうに感じられなかった。その感じにしかし、何の根拠がないことも分っている。

母をかこんで、ひろ子、二人の若い従妹たちが坐っている裏の板じきで、つや子は一人で働き出した。

「子供らをここへねかしたままで、どうなろう」

登代が術なさそうに立ち上った。

子供らを一人ずつ抱いて上り、二階に一同の寝具をうつした。降りて来てみると、つや子は物も云わず細い体で一枚一枚畳をめくり上げている。