Japanische Klassiker mit Furigana
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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
Lesen Sie 播州平野 (ばんしゅうへいや) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.683 Zeichen · 214 Bildschirme
さわ子が若さの中に感じている未来というものの図どりは、どういうものか。ひろ子とそういうことを話し合ったこともなかった。この前来た頃のさわ子は、海風に腕まで日やけした短い下げ髪の女学生であった。師範の寄宿舎でおなかがすくことを話して笑いこけていた。今度来てみれば、早春の枝のようにコチンとしていたさわ子のからだは、はればれと二十一歳の愛くるしさにみちて、声も美しく深まった。浅黒い面立ちのうちにあるおとなしさと熱意とは、つつましく身だしなみのよい若い女教師の表情に、独特な味わいを与えている。
ひろ子は、さわ子の若い女に珍しいそういう自然の故の沈厚さ、なだらかな故の威厳とでもいう雰囲気を愛した。ひろ子の精神をその底からつかんでいる近い未来への待ち望みには、希望の面にも不安の面にも、ポツダム宣言とか、刑法とか、あれこれの解釈、あれこれの条項というようなものが絡み合っていた。細かい事態の起伏、執拗な相互関係をたたみこんだものとして、明日が見えている。泳ぐ人が一つ一つのなみをのりこしながら、なお大きい海面のひろがりを全感覚の上にうけとっているように、ひろ子は、重吉が示すひろやかな展望を確信し、そこに身をすてまかせて、すべての細かい状況をしのぎ越して来た。