Japanische Klassiker mit Furigana
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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
Lesen Sie 播州平野 (ばんしゅうへいや) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.683 Zeichen · 214 Bildschirme
や、健吉が忘れて行ってしまった玉蜀黍の噛りかけなどがころがっている。
ひろ子は、少し書いては手を止めて、考えこんだ。網走の高い小さい窓の中で、重吉は、きっともう戦争の終ったことを知っているだろう。十二年の間、獄中に暮しつづけて来た重吉。六月に、東京からそちらへゆく前、面会所の切り窓から「まあ半年か、長くて十ヵ月の疎開だね」と云って笑った重吉。その重吉こそ、どんな心で、このニュースをきいたであろう。ひろ子は、こみ上げて来る声なきかちどきで息苦しいばかりだった。
この歳月の間に、ひろ子は検閲のある手紙ばかり千通あまりも書いて来た。いつか変通自在な表現と、お互のわかりあいが出来て、自然の様々な景観の物語などのうちにも、夫と妻との微妙なゆきかいがこめられるようになっているのだった。手紙をかき出して、ひろ子は、いつか習得させられた自分の気の毒なその技術を、邪魔なばかりに感じた。ひろ子は、はっきり、それこそその手紙の眼目としてききたいことがあった。たった一行それだけ書けばいいということがあった。しかし、まだ、それは書けまい。いつお帰りになるでしょう。書きたい言葉はその一行である。