Japanische Klassiker mit Furigana
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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
Lesen Sie 支倉事件 (はせくらじけん) von 甲賀 三郎 (こうがさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 204.697 Zeichen · 406 Bildschirme
「岸本さん、精がでるね」
「駄目ですよ、おかみさん、どうも貼付が拙くって」
「何それで結構だよ」
「そうですか」
「岸本さん、主人が喧しくって嫌でしょう」
「そんな事ありませんよ」
「主人はどうも気むずかしやでね、それだから書生がいつかなくて困るの。岸本さんは長く辛抱して下さいね」
お篠は岸本の横顔を眼尻を下げてのぞき込みながら云った。
「えゝ、おかみさん、どうぞ長く置いて下さい」
「置いてあげますとも」
「先生はどこへ出かけられたのですか」
「どこだか、大方又支倉の奥さんの所へでも行ったんだろう」
「え、支倉さん?」
「お前さん知ってるのかね」
「えゝ、私前にキリスト教信者だったもんですから、名前だけ知ってるのです」
「そうかい。支倉さんはそう云えば耶蘇だね」
「支倉さんの奥さんは中々偉いそうですね」
「何、偉いかどうだか分るもんか」
おかみは忽ち機嫌が悪くなった。
「御主人が留守だからって、主人を呼んじゃ相談ばかりしている。馬鹿にしてるじゃないか」
「支倉さんは留守なんですか」
「どこかへ逃げているんだよ」
「え、何か悪い事でもしたんですか」
「どうもそうらしいんだよ。あんな人に係り合ってゝは、末々きっと損をするに定っていると私は思うんだよ」