Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ほうろうのやど

放浪の宿

里村 欣三

Lesen Sie 放浪の宿 (ほうろうのやど) von 里村 欣三 (さとむらきんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.066 Zeichen · 28 Bildschirme

Aozora Bunko

いいか。さあ、若いの飲むんだ!」

若者はすっかり煙に巻かれてしまった。が、また彼奴は彼奴で、性根の据らない小盗人みたいに、たったいまはじける程に蹴とばされた睾丸のことも、鉄砲玉のように遁げ出したことも、すっかりけろりと忘れてしまって、酔払った大連が差し出すウォツカを呷り始めたのだ。

そして直ぐに、大連の酔いに追い着いた。

「そうだとも!」若者は出し抜けに叫び出した。何がなんだか判らない癖に、彼はよろめく脚を、そこいら中の露西亜人の長靴や、破れズボンにぶちつけながら、

「そうだとも! 兄弟。ふん、浮草みたいに何処をうろつこうともだ。いいか! 根なし草じゃあるまいし、ちゃんと住み心地のよさそうな土地に根をおろそうてな心構は、ちゃんと、なあ兄弟、しっかり握っていようじゃねえか。馬鹿にすんねえ! 間抜け奴。一体どこの国の土地がよ、この俺の口を食いつないでくれたんだ。へん。立ン坊じゃあるまいし、ちゃんと腕があるんだ。俺の腕を知らねえか。左官の藤吉を知らねえのか。この間抜け露助奴!」

彼は酔った。怒鳴る本人すら訳の解らない啖呵を吐き出しながら、顔中を赤貝みたいにむき出して、笑い崩れるロシヤ人のテーブルを泳ぎ廻った。