Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ほうろう

放浪

織田 作之助

Lesen Sie 放浪 (ほうろう) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.399 Zeichen · 47 Bildschirme

Aozora Bunko

二十銭宿の定りで、朝九時になると蒲団をあげて泊り客を追い出す。九時に宿を出て十一銭の朝飯をたべ、電車で田蓑橋まで行った。橋を渡るのももどかしく、阪大病院へかけつけると、浜子はいなかった。結婚したときかされ、外来患者用のベンチに腰を下ろしたまま暫くは動けなかった。今日は無心ではない、ただ顔を一目見たかっただけやと呟き呟きして玉江橋まで歩いて行った。橋の上から川の流れを見ていると、何の生き甲斐もない情けない気持がした、ふと懐ろの金を想い出し、そうや、まだ使える金があるんやったと、紙袋を取り出し、永いこと掛って勘定してみると、六円五十二銭あった。何に使おうかと思案した。良い思案も泛ばぬので、もう一度勘定してみることにし、紙袋を懐ろから取り出した途端、あっ! 川へ落して了った。眼先が真っ暗になったような気持の中で、ただ一筋、交番へ届けるという希望があった。歩き出して、紙袋をすべり落した右の手をながめた。醜い体の中でその手だけが血色もよく肉も盛り上って、板場の修業に冴えた美しさだった。そや、この手がある内は、わいは食べて行けるんやったと気がついて、蒼い顔がかすかに紅みを帯びた。