Japanische Klassiker mit Furigana
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もじのあるしへん
文字のある紙片
宮本 百合子
Lesen Sie 文字のある紙片 (もじのあるしへん) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.518 Zeichen · 6 Bildschirme
ととむねをつかれた時、やはり泣かなかった。磐石が心に押しかぶさったような云い難い苦痛を覚えた。それだ。それが今もつづいている。斯うやって考えていると、地面でも掘って頭から埋って仕舞いたいような惨めな堪らない心持と一緒に、今、たった今、彼の墓を掘りかえし、彼の肩をつかみ、力限り揺ぶりたい衝動を感じる。彼に目を醒まさせ、一言返事をさせたい。本心をききたい。面当てか、そうでないかの。――
私は無慈悲な、冷酷な女ではない筈だ。私は彼をしんから愛した。同時にいやなところをしんから嫌った。彼は不運なことにこの私の嫌がり丈を強く感じた。そしてああいうことになったのだが――気の毒だ。実に気の毒だ。而も、こうやって、制し難くこみあげて来る苛立たしいような、腹立たしいような、泣くに泣かれずむかつく激情は何だろう。
私は、彼の上に泣き倒れられない自分を腹の底から憎む。その自己嫌悪を追いつめてゆくと、恐ろしいことだが、彼にも深い憎しみを感じずにいられない。鼻のわきに悪人づらの皺をよせ、
『到頭勝ちましたね。口惜しいが貴方の註文通り私は苦しんでいる。ハッハ』
と云いたい瞬間さえある。