Japanische Klassiker mit Furigana
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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
Lesen Sie 文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子 (どうじ) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 177.454 Zeichen · 357 Bildschirme
河馬のような大きな入口は、かれの方にむかって、窓あかりに浮きながら開かれていた。
「そうですか。そちらでしたかね。」と、かれも慌てて歩き出して行った。と思うと、かれは、たしか七階目を下りた筈だのに、まだ八階目にいたのであった。窓外から吉原の灯つづきがぼんやり見えた。かれは恐ろしくなり出すと馳け足で下りはじめた。足音は相渝らず次から次へとつづき、背中をはたいてくるのであった。
かれは、しまいに堪らなくなって、そこにいた番人に問うた。
「いったい此処は何階目なんです。さっきから考えてもわからないんですが……。」番人はじっとかれの顔をみつめた。その目はうごかなかった。かれもしばらくじっとしたが、顔が乾いて熱が出てきたような気がした。
「ここは七階目ですよ。あなたは先刻から此処を一体何の気でかけ廻っているんです。気味の悪い方だ。さあ、ここが下り口ですよ。」番人は気短かそうにかれを下り口へつれて行って、押すようにしながら鈍い声で、
「此処からわき目をしないで下りなさい。窓を見ないで。」
そう言って引きかえして行った。かれはその通りにした。いくつも階段を下りて行くうちに、ある番人は湯気のあがった鉄瓶からいま茶をいれようとしているのが、ほとんど夢のように遠くながめられた。