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Japanische Klassiker mit Furigana

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どうじ

文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子

室生 犀星

Lesen Sie 文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子 (どうじ) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 177.454 Zeichen · 357 Bildschirme

Aozora Bunko

ふしぎにどういう時にでも、外出するときになると、どういう忙しい仕事をしていても女はいつも先廻りをして玄関へ出て待っているのが常であった。それが食後なれば外出することを感じやすいのは誰でもあるが、食事前にでも女はいつもれいの茶いろの帽子をもって、音のない水のように立っているのである。それゆえ男は暗いいろをした襖をうしろにして今の今、こうして女が立っているのを見ると、ぎっくりと胸にこたえた。あれほど静かに着換えをしていたのに、もう感じ出したのかと、そっとひと目くれると、女はしめった声で、

「いっていらっしゃいまし。」

そう言って茶いろの帽子をさし出した。ほそい蚕豆のような指さきが、柔らかい帽子のふちにあたまをそろえているを見ながら、男は帽子をうけとると黙って習慣的に下駄をひっかけて、自分でもびっくりするほど強く格子を開けると、四角な箱のような玄関から、するりと脱けて出てゆくのであった。女はすこし上目をしながら見送ると、そっと障子をしめてしまって、長火鉢のとこへ又ぺっとりと坐りこむのであった。

水気ぐんだ暗みが夕明りの隅々に這いかけても、かの女は坐ったまま、永い間一とところを凝視しつづけたのである。