Japanische Klassiker mit Furigana
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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
Lesen Sie 文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子 (どうじ) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 177.454 Zeichen · 357 Bildschirme
母親は、胸をひろげた。そこから葡萄の実ほどの、珠がすべり出、あか児の唇へふくまれた。
「病院の奥さまにこの花をいただきました。枯れましたけれど。」
「水甕にいれてお置き、いつもよくして下さるのね。」
いつの間にか、童子は母親のそばへ佇んでいた。そうしてあか児を覗き込もうとひくい背を延び上げようとしていた。父親も、うしろに立っていた。
「お母様。」
「なあに。」
「僕にそのあかん坊をちょいと見せて下さい。」
「こうしてですか。」
「え。」
童子は、赤ン坊を覗き込んだ。そばから父親が、童子の肩のところに手をおいて、静かに言った。
「おまえによく肖ていると思わないかい、鼻つきにしろ目にしろ大そうよくおまえに似ている。」
父親は、あか児の頬を指でふれてみたりして、それを童子に眺めさせた。が、むしろ童子の眼の中には明かに不快に近い曇色ある表情があらわれていた。父親にはそれが何よりさきに己が心にかんじられた。
「僕にはすこしも似ていない、僕のような顔はどこにもない、お母様、僕には似ていはしません。」
母親はその言葉を悲しそうに聞き、父親と顔をみあわせた。父親の顔には、何にも言うなという表情があった。