Japanische Klassiker mit Furigana
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となんせんせい
斗南先生
Lesen Sie 斗南先生 (となんせんせい) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.262 Zeichen · 44 Bildschirme
三造の方まで流れ出して来るかのように思われるのであった。昔、自分と一緒に猫を埋めた時の伯父の姿や、昨夜、薬をのむ前に「お前にも色々世話になった。」と言った伯父の声が(低い、嗄れた声がそのまま)三造の頭の奥をちらりと掠めて過ぎた。突然、熱いものがグッと押上げて来、あわてて手をやるひまもなく、大粒の涙が一つポタリと垂れた。彼は自分で吃驚しながら、また、人に見られるのを恥じて、手の甲で頻りに拭った。が、拭っても拭っても、涙は止まらなかった。彼は自分の不覚が腹立たしく、下を向いたまま廊下へ出ると、下駄をひっかけて庭へ下りて行った。六月の中旬のことで、庭の隅には丈の高い紅と白とのスウィートピイが美しく簇り咲いていた。花の前に立って、三造は、しばらく涙の涸くのを待った。
六
伯父の遺稿集の巻末につけた、お髯の伯父の跋によれば、死んだ伯父は「狷介ニシテ善ク罵リ、人ヲ仮ス能ハズ。人マタ因ツテ之ヲ仮スコトナシ。大抵視テ以テ狂トナス。遂ニ自ラ号シテ斗南狂夫トイフ。」とある。従って、その遺稿集は、『斗南存稾』と題されている。この『斗南存稾』を前にしながら、三造は、これを図書館へ持って行ったものか、どうかと頻りに躊躇している。